過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
*予想株価収益率(PER)
米国株式市場はMSCI米国指数、グローバル株式市場はMSCIワールド指数。
2025年5月12日現在
出所:ファクトセット、LSEGデータ&アナリティクス、LSEG I/B/E/S、MSCI、AB
Market Matters
ヘルスケア・セクターは、比較的良好なバリュエーションに加え、人口動態や人工知能(AI)の導入に支えられた力強い成長力を有するセクターで、比較的、魅力的な投資対象であると言えます。また、ヘルスケア・セクター固有のディフェンシブな特性は、外部環境が不確実な環境においても、安定性をもたらすとも考えられます。
脱グローバル化や公的債務の増加といったメガトレンドを背景に、市場環境は急速に変化しています。こうした変化は、過去15年と比べ、低い株式リターンと高い市場ボラティリティにつながる可能性があるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考えます。より魅力的な投資対象を追い求める投資家にとって、ヘルスケア・セクターは次の理由から、さらなる注目に値すると言えるでしょう。
人口の高齢化 に伴う関連製品や関連サービスへの需要の高まりが、ヘルスケア・セクターの構造的かつ長期的な成長を支えると考えられます。
新たな診断や治療の発展が、治癒の向上につながっています。また、これまでは治療することができなかった病気にも新たな治療方法が誕生し、人々の健康寿命が延びたことで、ヘルスケアサービスやヘルスケア製品の消費量が増えています。
AIの導入によるイノベーションの加速が、生産性の向上や新薬開発コストの削減、さらには研究開発における成功率の上昇や患者へのサービスや対応の改善につながる可能性があります。
ヘルスケア業界の新陳代謝などを経て、MSCI米国指数におけるヘルスケア・セクターの構成比率はわずか9.3%まで低下しおり、現在は過去15年で最も低い水準にあります。また、株価のバリュエーションも長期平均を大きく下回り、予想株価収益率(PER)がMSCI米国指数を19%下回る過去最低水準となるなど(図表1)、ヘルスケア・セクターは米国市場で最も割安なセクターとなっています。さらに、ヘルスケア株はグローバル市場においても、相対的に割安なセクターであると言えます。
一方、こうしたマイナスの状況にはプラスの面もあります。バリュエーションが割安であるということは、ヘルスケア企業のファンダメンタルズを市場が評価するようになれば、潜在的には大きなリターンの可能性もあるということです。また、ヘルスケア・セクターの組み入れは投資家にとって、割高なテクノロジー株への集中を避け、分散を追求するのにも役立ちます。不確実性の高い足元の市場環境において、これらは戦略的に大きなメリットであるとABは考えます。
2010年6月1日-2025年5月12日
過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
*予想株価収益率(PER)
米国株式市場はMSCI米国指数、グローバル株式市場はMSCIワールド指数。
2025年5月12日現在
出所:ファクトセット、LSEGデータ&アナリティクス、LSEG I/B/E/S、MSCI、AB
ヘルスケア・セクターは他のセクターに比べ、不透明な政策の影響を受けやすいのも事実です。トランプ米大統領は今年5月初め、製薬企業に薬価の引き下げを命じる大統領令に署名しました。それでも、政策環境の変化にも耐えうる良好な企業ファンダメンタルズに着目したアクティブ運用を行うことで、リスクは軽減できるとABは考えます。
また、ヘルスケア・セクターの大幅な構造変化も、リスクの緩和要因になるとみています。これまでは製薬企業がヘルスケア・セクターの中心でしたが、セクター全体の時価総額に占める製薬企業の割合は今や半分にとどまっています(図表2)。その一方で、医療テックと呼ばれるサブセクターに加え、医療機器や医療サービスなどの分野においてもクオリティの高い企業が多く誕生しており、それらが政策転換の影響をより受けにくい、多様な企業利益やリターンの源泉となっています。
ヘルスケア・セクターの時価総額比率
過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
2025年6月6日現在
出所:LSEGデータ&アナリティクス、MSCI、AB
2025年5月31日現在
出所:AB
ヘルスケア・セクターの株価は、政策不透明感の大部分を既に織り込んでいると考えられます。また、今後の見通しも堅調であるとみられ、ヘルスケア・セクターの長期的な利益成長率は14.2%と予想されています(図表3)。
サブセクター別では、特に医療テックの分野が、政策の不透明性にも強いと考えられます。その理由は、医療機器を購入するのは主に病院であり、長期的な価格の安定性が極めて高いと言えるためです。
MSCIワールド指数:利益成長率のコンセンサス予想(2025年時点、%)
過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
2025年6月6日現在
出所:LSEG I/B/E/S、MSCI、AB
パンデミック後のピーク以降、インフレは緩和していると言えるかもしれません。それでも、ABのリサーチによれば、今後のインフレ率は過去10年よりも構造的に高くなる可能性があり、投資家はそうした状況に備える必要があると考えられます。
ヘルスケア・セクターにはインフレを上回る利益成長を実現してきた実績があり、それは同セクターが持つ価格決定力やイノベーション力を裏付けるものでもあります。今日の新たなマクロ環境下では、インフレを上回る利益成長を実現できる力がますます貴重になるとABはみています。インフレに対する解としてのヘルスケア・セクターへの投資は長期的にみて、良好なパフォーマンスを提供すると考えます。
ヘルスケア・セクターにはインフレを上回る利益成長を実現してきた実績がある
いかなるビジネスにおいても、将来需要の予測は決して簡単ではありません。それでも、ヘルスケア企業の多くにとっては、世界全体の急速な高齢化が確かな需要源になると考えられます。
国連のデータによれば、先進国全体における65歳以上の人口の割合(高齢化率)は、過去20年で急激に上昇しており、2060年には28%に達すると予想されています。人口が比較的若い米国においてさえ、高齢化率は急速に高まっています。また、世界で2番目に人口が多い中国の高齢化率は、2060年には37%まで急上昇していると見込まれます。
高齢者の医療費は他の年齢層の2倍以上であり、長生きする人の増加は、医薬品や医療テック、さらには公的介護など、ヘルスケア製品やヘルスケアサービスへの支出を拡大させる、構造的な追い風になると言えるでしょう。
ヘルスケア・セクターは今、AIの導入による大きな恩恵を受けつつあります。
創薬の分野ではコストの削減や効率性の向上にAIが既に役立っており、医療テック企業においても、より正確な診断や患者個人に合わせた治療の提供にAIが活用されています。また、医療記録のデジタル化や医療業務の自動化は、医師が患者対応に集中できる時間を増やすとともに、看護師による迅速な記録の確認も可能にしています。
研究開発の成功率の上昇、業務効率の改善、さらには日常業務の自動化を通じて、AIはヘルスケア企業のコスト削減と利益率向上に寄与し、関連企業への投資においてもリターンを高める可能性があると言えます。
AIはヘルスケア企業のコスト削減と利益率向上に寄与し、関連企業への投資リターンを高める可能性がある。
世界で最も優れた科学者でさえ、新薬の試験結果を確実に予想することはできません。そうだとすれば、投資家はヘルスケア企業の何を見る必要があるでしょうか? ヘルスケア株への投資においては、“クオリティ”の高い企業に着目することが重要であると言えます。
ABの見方では、価格圧力や不安定な政策環境が続く中、長期的な成功を収めることができる“クオリティ”ヘルスケア企業には、以下の特徴があると考えられます。
一方、収益性を犠牲にしてまで利益成長を追求するような企業には注意が必要です。また、買収に積極的な企業についても、特に負債が多かったり、限られた製品に売上が集中していたりする場合は、慎重な調査が必要になると言えます。そして、試験に一度成功しただけで、その新薬に将来の成長を賭けるような企業には、特に注意が必要であるとABは考えます。
ヘルスケア企業への投資が効果を上げるには、特別な選球眼が求められると考えます。ただしそれは、科学的な知見のことではなく、ヘルスケア企業に影響を与える様々なファクターを組み合わせた、規律ある投資プロセスのことを意味しています。投資家はそうしたプロセスを採用することで、株式ポートフォリオの長期的な活性化につながる、リスク調整後の良好なリターンを狙うことができると言えるでしょう。
株式市場は、2025年前半に、大きなボラティリティに直面しました。トランプ大統領が米中貿易戦争の緩和に向けて動き出したとはいえ、今後しばらくは、政策の不透明感が高い状況が続くとABはみています。
ヘルスケア・セクターはこれまで、ポートフォリオにおいてディフェンシブな役割を担い、市場のストレス局面でも他のセクターに比べ、はるかに低いドローダウン(下落率)を実現してきました。
ヘルスケア・セクターのように長期的に高い成長力とディフェンシブな特性を兼ね備えた投資対象は珍しく、今日のような混乱期のポートフォリオにとって、ヘルスケア・セクターは魅力的な構成要素であると言えるでしょう。
ヘルスケア・セクターの足元のバリュエーションは、不透明な政策への懸念を既に織り込んだ水準にあるとみており、比較的リスクは抑えられていると考えます。構造的な要因がもたらす力強い成長の可能性を捉えるべく、ヘルスケア・セクターの戦略的なオーバーウェイトをABでは検討しています。また、マクロ経済の先行きが不透明で市場ストレスが高い環境下では、ヘルスケア・セクターのディフェンシブな特性がポートフォリオのクッションになるとも言えるでしょう。
当資料は、2024年10月現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン(AB) が作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売 買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
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アライアンス・バーンスタイン株式会社
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